出塁率と四則計算

野球と算数

野球は、塁に出ないと得点出来ない

どれだけ塁に出たかを表す「出塁率」

出塁率については、実は計算方法があまり知られていません。野球に詳しい方でも、「単純に出塁した率でしょ?」「エラーだって出塁なのだから、出塁率は上がるよ」という人も見受けられます。しかし、答えは「NO」です。

一体、出塁率とはどんな指標なのでしょうか?

出塁率を求める前に、四則計算のおさらい

野球の成績を確認する前に、数学のおさらいです。四則の計算が混在している場合、以下の順番に計算する決まりになっています。

 

四則計算の順番:

()内の計算・累乗の計算。

掛け算・割り算。

足し算・引き算

 

例:(2+3)×5+2×2³-(5-3)÷2           ・・・・まず()内と累乗を計算。ここでは(2+3)、(5-3)、2³。

=5×5+2×8-2÷2                              ・・・・次に掛け算と割り算を行う。ここでは5×5、2×8、2÷2。

=25+16-1                                             ・・・・最後に、足し算と引き算を行う。

=42

 

四則計算の順番は、手計算が減った昨今、うっかり忘れる人も多いようです。しかし四則計算の順番は、近年ではExcelで数式を作るときに必要です。このとき、四則計算の順番や数式の意味をしっかり把握していないと、エラーや計算ミスにつながります。特に()の付け忘れや付け間違いによる計算ミスは、発見しにくいのが特徴。十分に注意が必要です。

 

それでは、四則計算の計算方法を使い「出塁率」を確認してみましょう。

 

出塁率(OBP:On base percentage)の求め方

出塁率とは、その名のとおり「打者が出塁する確率」です。野球は出塁が多い程、得点の可能性が高くなるため、得点に直接結び付く重要な能力値になります。

また、出塁するということは「アウトにならない」ということにもつながりますので「アウトにならない確率」と表現する場合もあります。

出塁率は、以下の式で求めます。

分母には「出塁の可能性があった打席数」が入り、分子には「実際に出塁した数」が入ります。

野球に詳しい方でしたら、ここで「分母に犠飛(犠牲フライ)はあるのに、なぜ犠打(送りバンド)が無いの?」「エラー出塁は、出塁率に入らないの?」という疑問が浮かぶと思われます。それは、以下の定義になっているためです。

  • 犠打は、アウトになる前提のプレーであるため、対象外。
  • 犠飛は、ランナーがいないときには外野フライになるため、出塁機会の対象となる。
  • エラー出塁は、「バッターの能力値ではない」という理由で対象外。

犠飛・エラーは打数に入るため出塁率が下がり、犠打は出塁率に影響を与えません。しかし犠打が失敗したときには凡打となりますので、打数がカウントされ出塁率が下がります。

 

打率と出塁率の能力値

最も一般的な打者の能力値である「打率」と、「出塁率」はどう違うのでしょうか?下記の打者①と打者②の各打者の成績が、どう変化するかを確認してみましょう。

打者①:100打数20安打 四球19、死球1、犠飛0

  • 打率=20/100=.200
  • 出塁率=(20+19+1)/(100+19+1+0)=.333

 

打者②:100打数30安打 四球1、死球0、 犠飛5

  • 打率=30/100=.300
  • 出塁率=(30+1+0)/(100+1+0+5)=.292

 

打者①と打者②を比べると、①の安打数は20本、②の安打数は30本なので1.5倍の差があります。当然打率にも影響し、①が「.200」、②は「.300」と、1割の差が出ました。

しかし出塁率では、四死球の数が多く犠飛が少ない①が「.333」となり、②の出塁率「.292」を上回りました。この計算により、四死球での出塁が評価されたことが分かります。

 

まとめ

最近の野球界では、シングルヒット1本と四球1つが同等の評価となりつつあります。そうすることにより、出塁率が高くなり、よりチームの得点に貢献することが出来るという考え方です。事実、2022年オフに、北海道日本ハムファイターズの近藤健介が、7年50億円という評価でFA移籍しました。プロ生活11年でシーズン本塁打が最高11本の選手が、かつての三冠王・松中信彦と同等と評価されたのです。近藤の持ち味は、通算で4割を超える高い出塁率。2019年~2020年には、2年連続最高出塁率のタイトルを獲得しました。

少々過大評価と思われますが、出塁率の価値が上がったのは間違いありません。

セイバーメトリクスの世界では、出塁率がとても重要です。今後は出塁率に注目すると、野球の視野が変わるかもしれません。野球は時代とともに進化していますので、観る側も着眼点を進化させると、より楽しめるのではないでしょうか?

 

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