【書評】新庄剛志『スリルライフ』──“奇跡を起こす人”の思考法に触れる

その他

① 新庄剛志 著『スリルライフ-天才ではないが、天然でもない-』

令和に入った頃から低迷が続き、主力流出も重なった北海道日本ハムファイターズ。
そのチームをわずか2年で立て直し、2025年には2年連続2位というところまで押し上げたのが新庄剛志監督です。

FAでCランクの選手を獲得した他は大きな補強もせず、現有戦力やトレード、現役ドラフト等で再建を成し遂げました。

「なぜ、この人はここまでチームを変えられたのか」
「2022年の著書で語っていたことは、2025年の結果とどうつながるのか」

そんな“答え合わせ”をしたく、手に取ったのが本書『スリルライフ』。
ジャンルとしては野球本というより、人生の行動力を引き出す自己啓発書に近い一冊です。

本の中では印象的な言葉がいくつも登場し、改めて考えさせられることも多い内容だったため、紹介するに至りました。



「ハイリスク。ハイリターンで良い。」
「奇跡は起きる。第一歩を踏み出す勇気と、馬鹿にされてもあきらめない気持ちが大切。」

これだけで、すでに“刺さる人”には刺さるはずです。新庄らしいといえばらしいと感じる人も少なくないはずです。彼は著書を通じて、どんなメッセージを投げかけてくれたのでしょうか?

(極力ネタバレにならないように紹介していますが、名言や印象に残った部分は紹介しています)


② 本の概要

著者:新庄剛志(元プロ野球選手、2025年時点でプロ野球監督)
出版社:株式会社マガジンハウス
発行日:2022年2月23日 第一版
ページ数:232

第一章:0.1%の可能性を信じる

序盤では、バリ島時代のエピソードや、BIGBOSS就任の裏側など、“あの時何を考えていたのか”が語られます。

48歳でトライアウトに挑戦したきっかけ、SNSでのファンのコメントに影響を受けた話。
そして、有名な「優勝は目指さない」発言の真意——それは“選手の能力を最大限に引き出すこと”に焦点を当てた発言だったことがわかります。

さらに、
「出来ないことより、出来ることを伸ばす」
というシンプルな指針が、新庄流の育成論の核として語られます。



第二章:一歩踏み出すだけで世界は変わる

メジャー挑戦の話や、期待値ゼロからどうやって評価をひっくり返したか等を綴っています。
批判との向き合い方や、SNSの使い方など、現代の働き方にも通じるテーマが多い章でした。90年代の阪神を盛り上げた選手が、令和になってSNSを使いメッセージを届ける。これも時代ですね。

【何かに挑戦したいけど迷っている人】の背中を押してくれる章だと感じました。

第三章:最高の結果は最高の準備から

「技術6割・メンタル2割・ファン2割」という独自のバランス感覚、ファンの応援が2割というのは、野球ファンにとっては嬉しい指標です。野球ファンなら、ここだけでも一読の価値あり!


「80%の力でプレーしろ」というコンディション論。20%を残さないとケガの元になったり、力が入りすぎて不調につながるとのこと。ですから100%の力をそれ相当に付けないと、プロ野球では通用しないということになります。いくら実力があっても「けがをしたら一般人」になってしまいます。


そして“選手を伸ばすための仕掛け”など、監督としての哲学が語られており、野球を超えて【ビジネス書】として読めるほど実践的です。



第四章:逆境こそ最大のエネルギー

逆境の使い方、乗り越え方がテーマ。
クライマックス部分にも触れるので、ここは本書で楽しんでほしい部分です。




③ 印象に残ったテーマ・メッセージ

何より響いたのは、

「リスクを恐れていたら、何も生み出せない」

という姿勢。


もちろん、誰もが新庄レベルの行動力を真似できるわけではありません。
ただ、彼の言葉や選択には“失敗を怖れない人間の強さ”が凝縮されていて、その本質は誰にでも応用可能と思います。

実際には「ハイリスク・ハイリターンで良い」と表現していますが、それは個人差があること。リスクを最小限に抑えた方が良い人、反対にハイリスクで勝負する事に生き甲斐を感じる人、色々なタイプの人がいます。ただし、何をするにも多少のリスクはあります。個人的には、挑戦する人に対する、一番シンプルで分かりやすいアドバイスと解釈しました。




④ 特に良かった点・読んでよかった理由

新庄のやってきた“奇抜”な野球には、実はすべて理論があった——
この事実を知れたのが一番の収穫でした。

例えば、

  • 勘=アイデアであり、裏にちゃんとした観察と経験がある

  • 選手にファッションを意識させるのは、一般社会の“身だしなみ”と同じ

  • 礼儀正しい人はチャンスを得やすい

こうした部分は、スポーツだけでなく普段の仕事にも直結する内容です。

また、監督就任直後に有名になった、清宮選手への「ちょっとデブじゃね?」発言は、実はしていなかったということも綴っていました。マスコミに対しては、そういうニュアンスのことだということで発言しましたが、清宮選手本人には違う伝え方をしたということです。選手への伝え方とマスコミへの伝え方を使い分けているところも、新庄劇場の一つといえるでしょう。


⑤ こんな人におすすめ

  • 新庄剛志が好きな人

  • 新庄の“派手な言動”が苦手だけど、本心を知りたい人

  • 自己肯定感を高めたい人

  • 「一歩踏み出す勇気」がほしい人

  • 指導者・管理職の立場で、人を伸ばす方法を探している人


⑥ まとめ

新庄剛志は“野球界の革命児”と呼ばれることがあります。
実際、北海道日本ハムファイターズは彼を中心にチーム丸ごと変革を起こしました。

そして4年後に83勝を挙げたことは、まさに“有限実行”。

野球ファンはもちろん、人生の停滞感を破りたい人にとっても、
この本『スリルライフ』は、新しい視点をくれる一冊になるはずです。



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