■“たったひとり”が動かす野球への情熱
― 色川冬馬が示す「野球と組織改革」のリアル ―
2025年現在、ミルウォーキー・ブルワーズ国際担当スカウトを務める色川冬馬氏の本『たったひとりの独立リーグ野球改革』を紹介いたします。
日本・アメリカ・中南米・西アジア他、広範囲で活動してきた著者が、独立リーグの改革と、個人・組織のマインドセットについて語る一冊です。
(極力、ネタバレを避けながら本書の魅力を紹介します)![]()
■本の概要
著者:色川冬馬(2025年時点 ミルウォーキー・ブルワーズ国際担当スカウト)
出版社:亜紀書房
発行日:2025年10月1日 第一版
ページ数:236
■ 色川冬馬とは?
経歴
- 宮城県出身。
- 仙台大野球部を1年夏前に退部、アメリカへ渡りサマーリーグに参加
- 米独立リーグ・メキシコ・プエルトリコでプレー
- イラン・パキスタン・香港と代表監督を歴任
- 2020秋〜2025年3月までルートイン BCリーグ・茨城アストロプラネッツゼネラルマネージャー(以下GM)
- 2025年現在、ミルウォーキー・ブルワーズ国際担当スカウト
かなり異色のキャリアです。
【アンダードッグ】と、【ビリー・ビーン】
色川氏は以前、自らを【野球界のアンダードッグ(野良犬)】と称していました。しかしその卓越した行動力から、私は後に色川氏と ※ビリー・ビーンを重ねるようになりました。発想・行動力・信念を貫く姿は酷似しており、共通点が多い2人。
私、今では勝手に「和製ビリー・ビーン」と呼んでいます。
※ビリー・ビーン:MLBオークランド・アスレチックス、元敏腕GM
■ 本書の核となる2つのテーマ
マインドセット(目標設定)
色川氏は、「曖昧な目標では成果は出ない」と強調します。
- 選手が「どうなりたいか」を言語化
- 行動を細分化して“見える化”
- データと目標の結びつきを重視
これは野球に限らず、ビジネスでも通用する成長方法ではないでしょうか。
組織論とチーム改革
色川氏がGM就任前のチーム成績は、7勝49敗3分。勝率は.119(NPBの計算方法{引き分け試合を除く}では.125)。【投手の打率並】です。暗黒時代の阪神をも超える、絶望的な状態から始まったチーム改革。
そこで実践されたのは、
- 役割の明確化
- データを使った意思決定
- スピードある行動・改革
独立リーグという発展途上の世界だからこそ、“正しい努力を継続すると組織は変わる”ということが強く伝わります。
■ 新時代の選手育成:技術以外の能力も重視
色川氏が重視するポイントは、技術だけではありません。
● 見られる側としての姿勢
- インタビュー対応
- ファンとの接し方
- ユニフォームの着こなし
- 立ち振る舞い、表情
「選手は野球をしているだけではいけない」という教育を施し、運営にも対応できる選手に育て、撮影やインタビューにしっかり対応できるようになる。そうすればファンも増え、スポンサー受けも良くなる。「野球に専念しろ」という人もいると思いますが、それではファンが応援してくれません。
ファンが増えることで応援が盛り上がり、チケットやグッズ等が売れます。単に数字を残す選手より、ファンサービスの良い選手を応援するのがファン心理。野球ファンの方でしたら、お分かりかと思います。「神対応」「塩対応」などという言葉を耳にする時代、とても大切な育成方針だと感じました。
● SNS時代の「魅せる力」
どんな媒体でも「魅せる力」は、プロとしての価値を高める重要な要素。
現在は、北海道日本ハムファイターズの新庄監督もSNSを駆使しています。それを色川GMは、新庄監督が就任する前から、既に実行していました。
現代において、SNSは大切なツールなのだと、改めて教えていただけたように感じます。
■ 独立リーグの裏側がリアルに分かる
本書の魅力的の一つとして挙げるのが、“独立リーグの実情”が描かれている点。
- 選手の置かれた現実
- チームスタッフの苦労
- 地域とのつながり
- 海外挑戦のリアル
- NPBに指名される選手の裏側
7勝49敗3分のチームから、5年連続でNPBに選手を輩出するまでに至ったプロセス。その中でも、独立リーグからドジャースとの契約に至った奇跡の投手、松田康甫の話は興味深い話でした。
また、現東北楽天に所属の陽柏翔選手が、入団してから指名されるまでのエピソード も印象的。彼がとても可愛いキャラクターで紹介されています。間違いなく「応援したくなる選手」になることでしょう。
■ 読後に残る最大のメッセージ:行動する勇気「まず動く」
色川冬馬氏は、 「まず動く」 という行動が軸になります。
- 野球をするために、野球部を「退部」
- 海外挑戦
- 海外リーグでの経験
- 独立リーグのGM就任、徹底した改革
- ミルウォーキー・ブルワーズのスカウトに就任
行動の積み重ねが、今のキャリアを形成していったのです。
読後に自然と、こんな問いが生まれました。
・「人生の変え方」の方法は間違っていないか?
・リスクを恐れすぎてはいないか?
・本当に、一歩踏み出しているか?「つもり」になっていないか?
野球本でもありますが、「キャリアと人生の本」という一面も持った本です。
■まとめ:世界の野球を知りたい人の必読書
『たったひとりの独立リーグ野球改革』は、単なる成功談ではなく行動し続けた人のリアルな記録であり、
- 独立リーグ・世界の野球を知りたい人
- 野球ビジネスに興味がある人
- 組織改革や人材育成に関心がある人
- 自分を変えたいと思っている人
に強くおすすめできる一冊です。
【野球は、用語すら知らない】という方は、野球用語を知らなくても問題のないマインドセットの章だけでも読まれるといかがでしょうか?
得られるものは、必ずある一冊です。

